1.はじめに
飲食店を開く場合には、内装、什器備品の購入、初期の運転資金として借入をするケースが一般的です。ただ、店舗の規模によっては初期投資を抑えて出店することができるため、新規参入が多く、競争が激しい業種です。特に、新潟駅前、万代エリア、古町付近、駅南けやき通り沿いなどは県内でも特に競争が激しい地域であるといえます。そのため、新潟市においても廃業と新規出店は多くあります。
2.飲食店の倒産の特徴
①オーナーが連帯保証人
上記のとおり、開業時に運転資金などを借入するケースが多くあります。この場合、法人で店舗を運営している場合であっても、そのオーナーが連帯保証人となっているケースがほとんどですし、中にはオーナーの自宅に抵当権が設定されることもあります。
このような場合に法人が倒産をすると、金融機関としては、オーナー個人に対して請求を行います。「(連帯)保証」をすると、基本的には法人が負っている金融機関の債務を全て支払う義務がありますから、非常に金額が多額になることが多く、個人では返済ができないため、オーナー個人についても一緒に債務整理をする必要があります。
また、オーナーの自宅に抵当権が設定されている場合、法人が返済をできなければ、金融機関は競売を申立てる等の手段をとることができます。そのため、この自宅をどのように処理をするのかを検討しなければなりません。
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② 金融機関以外の債権者が多い
飲食店の場合、日々仕入れを行っており、その場で現金払いではなく掛けで仕入れているため、倒産をするとその仕入れ費用が未払となったままになります。そのため、債権者が多数にのぼることが一般的です。そのため、弁護士に依頼しないで倒産する場合、多数の債権者がオーナー個人や従業員等に電話してきたり、場合によっては自宅に押し掛けるなどの事態になる場合もございます。
③ 従業員の賃金などの対応が必要
飲食店の場合は、正社員・アルバイトを問わず、従業員を雇用していることが多くあります。この場合、従業員の賃金の支払いはもちろんのこと、社会保険の手続き等、店舗をしめるにあたってやるべき手続きがたくさんあります。
④ 賃貸物件であることが多い
飲食店の場合は自社物件を持つのではなく、賃貸物件に入っていることが多くあります。その場合、お店が倒産する場合は、明渡しをいつまでに、どのように行うのかが問題となります。
また、テナントの賃貸借契約については、金融機関からの借り入れと同様に、借主が法人であっても、オーナー個人が連帯保証人となることが多くあります。そのため、賃料の未払があれば、連帯保証人に対する請求がされることもあります。
⑤ 食材等の処分が必要
飲食店の場合、その日の仕入れだけでなく、数日分の食材が保管されていますし、飲み物のボトルが多数あります。
これらの廃棄をいつ、だれが行うのか、その費用をどうするのかという点は実務上素早く決定して対応しなければなりません。
⑥ 現預金が不足することが多い
飲食店の場合、時期によっては現金が潤沢にある場合もありますが、基本的に倒産の間際になると、各種支払いに追われてしまい、現預金がほとんどなくなっていることが圧倒的に多いと思われます。
しかし、裁判所に破産を申し立てる場合には、一定の費用が必要です。例えば、裁判所への手数料、弁護士費用等です。これは現金で準備しなければなりません。
店舗をしめるにあたっては法律に従って破産手続きを選択することをおすすめしますが、現金が必要となることは、予めご承知おきいただいた方がよろしいかと思います。破産手続きが申立てることができるかどうかについては、弁護士に確認してください。
裁判所に破産の申立てを考えられる場合には、いかにして現金を用意するかと言う点は非常に重要な課題です。
賃貸であれば、不動産業者や知っている飲食店に相談をして、居抜きでの引継ぎや什器備品の売却ができるか打診をしたり、その場合の敷金(保証金)の返還を求めるなどの対応が考えられます。
3.最後に
飲食店等の倒産は、お店を閉じるだけでなく、様々な対応が必要になってきます。債権者の対応を含め、オーナーお一人で抱え込んでしまうことは、良い対応策であるとは言えません。弁護士に相談することで、取りうる手段や法律的に適切な方法等、お力になれることがあるかもしれませんので、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
飲食業を取り巻く環境
飲食業の倒産件数が過去最多を更新しています。
緊急事態宣言時には外出自粛要請や時短営業の要請等がありましたら、その解除後も客足が戻らず、売上が低迷しているところが多くあります
東京商工リサーチが公表している情報では、「飲食業は、2019年から人手不足が深刻化し、人件費の上昇が大きな経営課題に浮上していた。そこに新型コロナの感染拡大で、1-3月の倒産は219件(前年同月比23.7%増)と急増した。5月以降、持続化給付金や民間金融機関の実質無利子・無担保融資などが動き出し、支援効果で4-6月は199件(同2.4%減)と減少に転じた。しかし、緊急事態宣言の解除後も客足や売上は戻らず、7-9月は237件(同14.4%増)と再び増加した。ただ、10月には「GoToイート」も始まり、9月以降は3カ月連続で前年同月を下回っている。自主的な休廃業・解散と負債額1千万円未満の倒産を加えると計約2400件に上り、飲食業の苦境はさらに鮮明となる。」と、人手不足という課題が解消されない段階で新型コロナのショック等により打撃が大きかったことが指摘されています(引用元:
東京商工リサーチ)。
年末の忘年会等が減少している中、業界全体の売上低迷は必至であり、今後の先行きが不透明な状況となっています。
飲食店の倒産等をお考えになる前に、各種給付金や実質無利息の融資等をまずご検討いただくことはもちろんですが、もし閉店等をお考えの場合にはまず弁護士に一度ご相談ください。
法人経営の飲食店の破産手続きの流れ
まずは個人店経営ではなく、法人経営の飲食店の場合の破産手続きについて解説します。
弁護士に相談・依頼
まずは弁護士に相談することを強くおすすめします。
なぜなら、飲食店の倒産にはさまざまな手続きが必要であり、専門的な知識が必要であるばかりか、オーナーだけでの対応が非常に負担であるためです。
当事務所では、飲食業だけでなく、運送業、印刷業、卸売業など様々な業種について破産申立の実績があります。
各飲食店に適切なアドバイスをいたしますので、まずはお気軽にお問合せください。当事務所での破産手続のご相談は初回無料です。
ご依頼いただく場合には、契約前に、費用やおおまかな見通し、手続きの流れをご説明いたします。ご納得いただいてから、正式に弁護士と委任契約を締結してください。ご相談だけで解決できる場合もあります。
弁護士の対応
ご契約後、弊事務所より全ての債権者に対して「受任通知」を発送します。
この「受任通知」とは、債権者に対して、弁護士が代理人に就任したこと、今後の支払いは行わないこと、今後の一切の取り立てや債務者及びその家族や従業員に対して連絡をしないことを求める通知文です。
この受任通知が債権者に発送されると、今後金融機関からは法律上取り立てを行うことはできませんし、それ以外の債権者に対しても事実上取り立て等を断念させる効果があります。
弁護士が受任通知を債権者に発送することで、債権者による取り立てや連絡などから解放されるので、飲食店経営者の精神的な負担はかなり軽減されます。
破産申立に必要な書類作成、資産・負債調査・従業員の解雇など
担当弁護士が依頼者の方に様々な事情をお伺いし、破産申立に必要な情報だけでなく、弁護士が対応しなければならない作業を確認して、準備を進めます。
ほぼ全ての破産申立に必要な書類は弁護士が作成しますので、「どのような書類を作ればいいのかわからない」と不安に思われる必要はございません。
弁護士が介入する段階で、従業員を雇用している場合は、解雇手続きを行います。従業員の立場からしても、突然解雇されることになるわけですから、今後の生活に不安があります。場合によっては弁護士が解雇に立ち会って今後のことについて説明をしたり、提携する社労士に書類作成等を依頼しています。
従業員の給料に未払がある場合は、未払い賃金立て替え制度等を利用して対応します。
その他、債権者の強制執行や相殺等を防止するため、基本的には、現金預貯金等を弁護士が管理して保全します。
地方裁判所への破産申立て
代理人弁護士が地方裁判所へ破産手続きの申立書を提出します。
事件によっては、事前に裁判所と協議をして、破産手続きをスムーズに進めることが出来るよう調整します。
この申立ての際に、予納金と呼ばれる手続き費用を納めます。
この予納金についてはこちらをご覧ください。
破産手続き開始決定・破産管財人選任
地方裁判所より破産手続きの開始決定がなされ、破産管財人が選任されます。
破産管財人が選ばれることで、法人が所有する財産の処分権限が破産管財人に移ります。その上で、財産の調査や売却などを行い、債権者に配当する財源を確保し、最終的に各債権者への配当を目指します。
破産管財人には、会社とは利害関係のない弁護士が選ばれます。例えば、破産会社の顧問弁護士や、破産申立代理人の弁護士は選ばれません。
破産管財人は、破産手続きにいたった理由、その他の事項について調査する権限を有しており、法人の代表者等は調査に協力しなければなりません。
債権者はこの破産手続き開始決定通知を受け、債権の金額を債権届出書に記載して裁判所に提出します。
債権者集会
裁判所に破産手続きを申立ててから約2~3か月後に、「債権者集会」が開催されます。
債権者集会は、裁判官、破産管財人、破産申立代理人弁護士、破産者(ご依頼者様)、債権者などが出席し、破産管財人が裁判所や債権者に対して、会社の資産及び負債状況、配当の見込み等を説明します。
換価する資産がない場合などは、債権者集会を1回だけ開催して終わることが多いです。
債権者への配当
破産管財人は、会社財産を売却する等して確保した資金を、各債権額に応じて支払います。
これを「配当」といいます。
この配当には順序が決まっており、租税公課や従業員の未払い賃金は、通常の一般債権よりも優先して支払わなければなりません。処分して捻出した資金から、税金や社会保険料などの未払い賃金を支払います。それでも配当財源がある場合には、一般の債権者に配当を行います。
配当できるだけの資金がなければ、配当がないまま終了するケースが多くあります。
破産手続きの終結
配当手続きまで完了しますと、破産手続きは無事終結となります。
※なお、個人経営の飲食店の破産手続きの流れですが、飲食店は、法人ではなく個人事業主として経営している場合も基本的には上記と殆ど同じ流れになります。