元アイドルグループに所属していた歌手が、大麻取締法違反の疑いで逮捕されるという衝撃的なニュースがありました。
さて、件の芸能人の被疑事実は「大麻所持」というものでした。大麻取締法では、大麻を輸入・輸出、栽培、譲渡・譲受、所持することが禁じられています。
「使用」しても罪にならないのかというと、罪にはなりません。とはいえ、「所持」を禁止しているわけであって、「使用」することを法律が積極的に肯定しているわけではありません。
大麻は植物なのですが、この植物全体に有害物質が含まれているわけではありません。例えば香辛料に含まれている麻の実など、規制対象から外されるべきものも存在します。このような規制対象から外されるべきものを体内に入れた場合に処罰されるのはおかしいわけですね。簡単に言ってしまうと、このような処罰すべき部分と処罰されてはいけない部分とを明確に区別するために、大麻の「使用」を規制対象から外したわけです。
それでは、大麻を所持した場合にどのような手続きを経て、どのような処分となるのでしょうか。
基本的に、証拠隠滅などを防ぐために被疑者を逮捕することがほとんどです。その上で、勾留という手続を経て、客観的な証拠が揃っており、なおかつ、本人が所持していることを認めているような場合には、起訴されます。事実関係に争いがなければ、第1回期日で審理を終え、第2回期日で判決の言い渡しがなされます。量刑としては、非営利目的の単純所持で、初犯なのであれば、懲役1年6か月~3年、懲役3~5年くらいの判決になることが多いと思われます。
このような大麻を所持したりすることについて、合法化すべきだという主張があります。現に、アメリカ合衆国の一部の州やカナダ等では、大麻の使用等が合法化されています。大麻の人体に対する有害性等の議論はここでは割愛しますが、日本人が例えばカナダに旅行へ行った際、現地で大麻を所持しても問題ないのか、という素朴な疑問が生じます。
この点、国外で罪を犯した日本人にも法律を適用すると定めた条文が刑法第2条ですが、これは大麻取締法でも準用されています(同法24条の8)。そのため、理論上は、日本国外であっても、大麻取締法が適用されるということになります。
ただし、現実問題として、日本の警察が海外にいきなり乗り込んでいって取り締まりができるかというと、国家主権にかかわるものであるので、基本的にできません。処罰は困難というところです。
もっとも、だからといって国外で大麻の所持をしてもよいということにはなりません。特にSNSで大麻を所持しているところをアップすれば、それはやはり問題でしょう。
海外へ渡航されるときには、大麻に限らず、違法薬物等の犯罪に巻き込まれぬよう、くれぐれもご注意ください。
【参考条文】
大麻取締法
第二十四条 大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
第二十四条の二 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
第二十四条の四 第二十四条第一項又は第二項の罪を犯す目的でその予備をした者は、三年以下の懲役に処する。
第二十四条の六 情を知つて、第二十四条第一項又は第二項の罪に当たる行為に要する資金、土地、建物、艦船、航空機、車両、設備、機械、器具又は原材料(大麻草の種子を含む。)を提供し、又は運搬した者は、三年以下の懲役に処する。
第二十四条の七 第二十四条の二の罪に当たる大麻の譲渡しと譲受けとの周旋をした者は、二年以下の懲役に処する。
第二十四条の八 第二十四条、第二十四条の二、第二十四条の四、第二十四条の六及び前条の罪は、刑法第二条の例に従う。
出身地 新潟県加茂市
略 歴 新潟県立三条高等学校卒
新潟大学法学部卒
九州大学法科大学院修了
最高裁判所司法研修所修了後、弁護士登録
趣 味 サッカー、旅行(特に京都が好きです) 一 言 フットワークの軽さ・迅速な対応を心掛け ています。まずはお気軽にお問合せください。 |