刑事事件のニュースをみると「懲役〇年、執行猶予〇年」という言い方をよく目にします。
この執行猶予とは、一定の期間、刑の執行を猶予するということです。有罪の場合に、刑の言い渡しと同時に言い渡すこととされています(「執行猶予付き判決」と言うこともあります)。
この執行猶予期間中に新たな犯罪に及んでしまい、禁固以上の刑罰が科された場合には、執行猶予が取り消されて、以前に下された判決と今回下された判決との刑期を合算した期間、刑務所に入らなければなりません。
そういった意味で、執行猶予が付されたからといって全く足かせがなくなるわけではなく、より一層犯罪等に手を染めないように生活することが求められるわけですね。
なお、執行猶予は懲役刑の場合だけでなく、実は罰金刑等の場合にも付けることができますが(刑事訴訟法461条後段)、実務上、執行猶予付きの罰金判決の事件を担当することは考えにくいところです。
では、執行猶予が法律上どのように定められているかといいますと、刑法第25条に書いてあります。第1項を抜粋しました。
法 第25条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その執行を猶予することができる。 一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者 二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者 |
とてもわかりにくい規定ですが、この条文からわかることは、あらゆる重さの刑罰の場合に執行猶予が付けられるわけではなくて、あくまで「三年以下の懲役若しくは禁固」の場合に付されます。
また、執行猶予期間も定められていて「一年以上五年以下」です。
つまり、「懲役20年、執行猶予10年」という判決は法律上あり得ないわけですね。
あと、初犯であれば必ず執行猶予がつくというルールはありません。執行猶予を付するべきなのかどうかは、「情状」等を総合的に考慮して決することになります。
次に、この執行猶予がいつから始まり、いつ終わるのかを説明します。
まずスタート時点は、「裁判が確定した日」です。そして、判決が確定するのは、判決が出された翌日から起算して14日を経過したときです。
例えば、2019年11月1日に執行猶予3年が付いた判決が下されたとします。上訴期間がスタートするのは翌日11月2日で、上訴期間の満了は11月15日です。15日のうちであれば上訴ができます。15日を経過することで判決が確定するので、11月16日が「裁判が確定した日」となります。
この日を含めて執行猶予期間である3年をカウントすると、執行猶予期間の満了日は2022年11月15日となります。
※参照条文(刑事訴訟法) 第333条 被告事件について犯罪の証明があつたときは、第334条の場合を除いては、判決で刑の言渡をしなければならない。 2 刑の執行猶予は、刑の言渡しと同時に、判決でその言渡しをしなければならない。猶予の期間中保護観察に付する場合も、同様とする。
第373条 控訴の提起期間は、十四日とする。
第461条 簡易裁判所は、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、100万円以下の罰金又は科料を科することができる。この場合には、刑の執行猶予をし、没収を科し、その他付随の処分をすることができる。 |
出身地 新潟県加茂市
略 歴 新潟県立三条高等学校卒
新潟大学法学部卒
九州大学法科大学院修了
最高裁判所司法研修所修了後、弁護士登録
趣 味 サッカー、旅行(特に京都が好きです) 一 言 フットワークの軽さ・迅速な対応を心掛け ています。まずはお気軽にお問合せください。 |