2017年10月発行
・民法(債権法分野)改正
・コラム ファイナルカレー
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弁護士法人美咲総合法律税務事務所では、法務・税務関連のニュースや弊事務所の近況などを、ニュースレターとして不定期にお送りさせていただいております。
さて、11回目の今回は、私法の基本法である民法の債権法分野の改正について解説させていただきます。
民法(債権法分野)改正
説明の仕方はいろいろあると思いますが、民法は、広く私人間の権利義務関係を定めた法律です。例えば、私人間の取引関係(売買、賃貸借)や親族、相続に関し規律しているのは民法です。
もちろん、個別の取引や取引主体に応じて、特別に適用される法律があります(借地借家法、消費者契約法、商法等)が、それらの法律は民法の規定を前提として、それを修正するものですので、民法がベースとなっているのです。
平たく言えば、「一番大事な法律」と言っても過言ではありません。
改正はいつから? 何が改正されるの?
今年の5月26日に、民法の改正法案が成立し、6月2日に公布されました。そして、公布から3年以内(平成32年)に施行されることになりました。
公布は国民に知らせることをいい、施行により法律の効力が発生します。
ですので、平成32年6月1日までに、改正民法が効力を持つことになります(具体的な日はまだ決まっていません)。
改正される点は多岐に及んでおりますが、分野としては債権法と呼ばれる分野が改正されます。債権法について簡単に説明をすれば、私人間の取引に関する分野とご理解いただければと思います。
これに対し、親族法といった分野は改正されません。
改正のポイント
それでは、改正のポイントについて、ご説明いたします。
以下では、現行の民法を「現行民法」と改正後の民法を「改正民法」といいます。
なお、今回のニュースレターでご説明する以外にも重要な改正があり、特定の業界に大きな影響を与えるものがあります。
1 消滅時効の見直し
⑴ 一般債権の時効
現行民法では、一般債権(普通の債権という意味です)の消滅時効は10年とされています。例えば、売買代金請求権の時効は10年ですし、よくCMで「過払い金の時効は10年です」といっているのも、一般債権の時効が10年だからです。これに対し、改正民法では、一般債権の消滅時効が5年となります。
⑵ 特殊な債権の時効
その他、現行民法では、債権の種類に応じて、細かく1年年や2年といった消滅時効を定めています。あまりに細かすぎて弁護士でも覚えていない人が多いのではないかと思われるのですが、こういった細かい消滅時効の多くがなくなり、一般債権と同じく5年とされます。
不法行為に基づく損害賠償請求権(例えば、交通事故)の消滅時効は現行民法と同じく、改正民法でも3年のままですが、人の生命身体を害する不法行為(例えば人損事故)の消滅時効期間が5年になるのがとても重要です。
2 法定利率の見直し
現行民法では、法定利率5%とされています。
これが改正民法では3%となり、また3年ごとに見直しを行うようになります。
法定利率は、本来市場経済における金利水準に沿ったものであるべきですが、民法制定から長い期間が経過したことにより、5%という利率が市場の金利と大きく解離し、そのため3%に下げることとなりました。
この法定利率の見直しが損害賠償実務に与える影響は見た目より大きいものです(専門的な話になりますが、5%を前提としているライプニッツ係数が3%を前提に計算されることにより、損害賠償額が高額化することが予想されます)
3 約款規程の創設
保険契約や預金契約等の多くの取引において、いわゆる約款を用いることがありますが、現行民法ではこの約款に関する規定がありませんでした。
改正民法では、一定の内容をもつ約款について、規定を設け、拘束力に明文の根拠を設けるとともに、社会通念等に照らして、信義誠実の原則に反して相手方の利益を一方的に害するようなものについて、効力を否定する等しています。
4 保証人保護の拡充
改正民法によって、保証人の保護が拡充されます。
具体的には、事業のために負担した貸金等債務を主債務とする保証について、経営者等一定の者以外の者が保証人となる場合には、保証契約の締結に先立ち、公正証書において保証債務を履行する意思を示さなければなりません。
これは、第三者が情義から十分に内容を理解しないまま容易に保証契約を締結することを防ぐ趣旨です。
そのほかにも、改正民法では、主たる債務者あるいは債権者に対し、保証人への情報提供を義務をづけるなどしています。
【コラム】 ファイナルカレー
このキャッチーな見出し、いかがでしょうか。
ファイナルカレーとは、カレーのスペシャリストと言われる水野仁輔氏(私も詳しくはどのような人か知りません)が、欧風カレーとインドカレーのいいとこどりをして、最後にたどり着いたカレーとして考案したものです。
私(小林)は、特にカレーにこだわりがあるわけではないのですが、前に2度ほどホームページに「カレーをスパイスから」というコラムを書いたことがあることから、「ファイナルカレー」という言葉を見たときに、とにかく気になってしまいました。
このファイナルカレー、インターネット上で探してもレシピは載っておらず、レシピは水野氏の「いちばんおいしい家カレーを作る」という本に掲載されています。
そこで、同書を購入し、さっそく作ってみました。
レシピを掲載することは致しませんが、特徴としては、しっかりと飴色玉ねぎを作る、スパイスを使う、セロリやトマト等を使った香味ジュース(水野氏の造語)を使うといった特徴があります。
一度目に作った時は、ミキサーの使い方が足りなかったのか、煮込みが足りなかったのか、ルーにざらざらとした触感が残ってしまいました。二度目に作った時は、ルーがざらざらした感じはなくなったのですが、豚バラ肉の脂がしつこく感じました。三度目に作った時は、豚バラ肉の油のしつこさを取り除くため、できあがった後、豚バラ肉を取り出し、脂身の部分を取り除きました。
こうして、私の「ファイナルカレー」はひとまず出来上がったわけで、もちろんおいしいカレーになっています。
しかし、本の最後に「ファイナルカレーは始まりのカレーでもある」と書いてあるとおり、ここから改良を加えて行かなければなりません。
私としては、少しフレッシュすぎる(トマトが強い)のと、何か触感がほしいと思っていますので、この点を改良していきたいと思います。
編集後記
今回の民法改正は、民法制定以来、約120年ぶりの抜本的な改正になっています。
冒頭でお伝えしたとおり、民法は「一番大事な法律」といっても過言ではないほど、重要な法律です。
この民法改正は、特定の業界に限らず、各業界に影響を与えるものであり、弊事務所の弁護士も、改正民法の施行に備え、各自勉強をし、研修に参加するなどしています。
民法改正によって、一番あたふたしているのは、弁護士業界なのかもしれません。
(弁護士 小林 塁)
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