・交通事故(物損)Q&A
・民事信託(家族信託)って?
※pdf版をご覧になられたい方はこちらか下記の写真をクリックしてください。
弁護士法人美咲総合法律税務事務所では,法務・税務関連のニュースや弊事務所の近況などを,ニュースレターとして不定期にお送りさせていただいております。
さて,15回目の今回は,当事務所が注力しております,交通事故,その中でも物損について解説させていただきます。
物損については,どこまで賠償されるか?
交通事故の損害については,様々な分類ができますが,大きく分けると車の修理費等の物損と,治療費等の人損に分けられます。
我々弁護士が多く扱う事案として,人損の事案が多くなっています。
それは,人損の方が慰謝料や後遺障害に関する損害など,賠償額が大きくなることが多く,それだけ加害者加入の保険会社が算定する金額と,本来あるべき金額との乖離が大きく,弁護士が依頼を受けることによる増額が大きくなるためです。
もっとも,多くの事案では車の修理費等,人損よりもまず物損が問題となりますし,多くの方にとっても,身近な問題です。
そこで,今回のニュースレターでは,物損について,よく問題となる点や,もし自分が事故に遭った場合に,疑問に思うであろう点について,Q&A形式でお伝えできればと思います。
A:ローン支払中の車の場合,代金の支払いが終わるまで,車の所有権は販売会社等に留めておくとされていることがあります(これを所有権留保といいます)。
そうすると,車の所有者は販売会社ですので,購入者は修理費を請求できないように思われます。
しかし,販売会社が所有権を有することは,担保のためであり,実質的な所有者は購入者であること等を理由として,修理費の請求が認められます。
A:一見すると,修理をするつもりがないのですから,修理費は発生しないように思えます。
しかし,交通事故の損害は,事故発生時に発生しているものと考えられますので,たとえ修理をしなくとも,修理費(修理見積額)を請求することが可能です。
A:修理をする場合には,修理業者には消費税を支払わなければなりません。ですので,修理をする場合には,当然消費税分の請求もできます。
では,修理をしない場合に消費税分を請求できるでしょうか。
これについては,裁判例は分かれておりますが,先ほどと同じく,交通事故の損害は,事故発生時に発生するものと考えれば,消費税分の請求は十分可能だと思われます。
A:改造車については,その修理費の賠償が認められるか,認められるとしてどの範囲までは認められるかについては,裁判例によって結論が異なっています。
しかし,車にどのような改造を行うかは所有者の自由ですし,事故によって改造した部分が損傷したのであれば,それを加害者が賠償するのは当然と考えられます。
したがって,改造が法律に抵触するような場合等,例外的な場合を除いては,改造車であっても普通の車と同様に,修理費の請求ができると考えて良いと思います。
私が経験した事案でも,改造バイクが全損になったとして,バイクの時価額を請求する際に,改造にかかった費用を含めて請求し,ほぼそれを認めるような形で和解した経験があります。
A:部品の調達に時間がかかるなど,例外的な場合を除いては,一般的には修理に必要な1,2週間と言われています。
加害者の保険会社は1ヶ月,また事案によってはそれ以上代車費用を支払ってくれることもあり,私も交渉によって長期の利用を認めてもらったこともあります。
しかし,代車費用については,仮に話し合いで解決せずに,裁判となった場合には,上記のように1,2週間分しか認められない可能性があります。
ですので,加害者の保険会社の主張に納得がいかない点があったとしても,代車については速やかに返還するなどし,納得がいかない点があれば,それはそれとして交渉をする方が良いと思われます。
法律関係は,権利者と義務者というように,2者関係として把握することが一般的です。
民事信託という仕組みは,委託者が,一定の目的のために自分の財産を第三者に託し(託される人を「受託者」といいます),その第三者が財産を管理,運用するなどし,そこから生じる利益を受益者が受ける,というものです。
家族信託は,この民事信託を家族のために利用するというもので,内容としては同じものとなります。
さて,この民事信託(家族信託)がなぜ注目されるようになったかというと,高齢化社会の中,多くの方が相続に関心を持つようになり,信託を利用すれば,遺言や成年後見制度にはないメリットが得られるということや,法改正により信託が利用しやすくなったと言うことがあげられます。
例えば,遺言では,ある人に遺産を相続させることはできますが,そのある人が亡くなった後の財産の帰属まで決めることはできません。
これに対し,信託ではこういったことを決めることができます。
また,障害があるなど将来が心配な子どもがいるとして,自分の判断能力にも問題が生じてきたとします。そのまま判断能力が低下した場合には,成年後見人が選任されるなどしますが,成年後見人は,被後見人(ここでいう親)の財産を守ることを第一の任務としますので,子どもへの支援を十分に行えるかは疑問です。
こういったときに,信託を利用し,自分の財産を守るとともに,子どもへの支援を行っていくことが可能になります。
信託は柔軟な制度であるため,遺言や成年後見で対処ができない問題がある場合に,対応することが可能となります。
交通事故で弁護士が扱う多くの事案は,人損の事案です。
しかし,物損の方が身近な問題ですし,物損で問題となる点は限られていますので,ニュースレターで物損で問題となる,ほとんどの問題に触れることができると思い,今回のニュースレターで取り上げました。
また,民事信託(家族信託)は,メディアで取り上げられるなど,話題になることが多く,関心をお持ちの方もいらっしゃると思いましたので,頭出し程度ですが,書かせていただきました。また,より詳細に扱いたいと思います。(弁護士 小林 塁)
Vol. | 発刊月 | メインテーマ |
31 | 2022年1月 | 2022年に実施される法律 |
30 | 2021年6月 | 事業承継について考える |
29 | 2021年1月 | ウィズコロナ時代の労務管理のポイント |
28 | 2020年9月 | まだ間に合う、新型コロナ関連の給付金・補助金等 |
27 | 2020年6月 | インターネット・名誉棄損・コロナ・懲戒・プライバシー |
26 | 2020年4月 | 新型コロナウイルスに関する労務問題Q&A |
25 | 2020年2月 | 事業承継について |
24 | 2019年12月 | パワハラ防止対策について |
23 | 2019年10月 | 契約書作成のポイント |
22 | 2019年8月 | 受動喫煙防止を内容とする法律の改正について |
21 | 2019年6月 | SNSと雇用管理について |
20 | 2019年4月 | 年次有給休暇付与の義務化について |
19 | 2019年2月 | 勾留延長?準抗告?保釈って? |
18 | 2018年12月 | 働き関連法の概要 |
17 | 2018年10月 | その「懲戒処分」、大丈夫ですか? |
16 | 2018年8月 | 成人年齢引き下げ(18歳)について |
15 | 2018年6月 | 交通事故(物損)Q&A |
14 | 2018年4月 | 民法(相続分野)改正 |
13 | 2018年2月 | 債権回収の進め方 |
12 | 2017年12月 | 「経営者保障に関するガイドライン」とは? |
11 | 2017年10月 | 民法(債権分野)改正 |
10 | 2017年8月 | 残業時間に関する規制の概要 |
9 | 2017年6月 | 個人情報保護法改正ー中小企業実務への影響 |
8 | 2017年4月 | 相続の基本と相続Q&A |
7 | 2017年2月 | 従業員の交通事故に対する会社の責任 |
6 | 2016年12月 | 成年後見制度について |
5 | 2016年10月 | 職場のメンタルヘルス対策,大丈夫ですか? |
4 | 2016年8月 | 刑事手続きの流れ |
3 | 2016年6月 | 離婚問題について |
2 | 2016年4月 | 遺言を残すにはメリットがあります |
1 | 2016年2月 | これだけは知っておきたい!交通事故の注意点! |