無料駐車場完備
025-288-0170
受付平日9:30〜18:00(夜間土日祝応相談)

Vol.18 働き関連法の概要

2018年12月発行

  • 働き関連法の概要

※pdf版をご覧になられたい方はこちらか下記の写真をクリックしてください。

弁護士法人美咲では,法務・税務関連のニュースや弊事務所の近況などを,ニュースレターとして不定期にお送りさせていただいております。

さて,18回目の今回は,今年6月の通常国会で成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」についてお伝えいたします。

働き方関連法の概要

平成30年6月29日、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」、通称「働き方関連法」が参議院本会議で可決され、成立しました。同法は、労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法等,複数の法律の改正に渡る内容になっております。

今回のニュースレターでは、「働き方関連法」のポイントをご説明いたします。

残業時間(時間外労働)の上限規制

①内容
原則:月45時間、年360時間
例外:業務量の大幅の増加等に伴い臨時的な特別な事情がある場合には、年720時間を上限。ただし、㋐休日労働を含み、月100時間未満、㋑直近2~6ヶ月の平均がいずれも月80時間以内(休日労働も含む)としなければなりません。

②施行日
(大企業)平成31年4月1日
(中小企業)平成32年4月1日

③罰則
6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

④企業側の対応
新たな36協定(労働基準法36条に規定されている労使間の協定)を締結する必要があります。

中小企業における月60時間を越える残業時間への割増賃金率の適用

①内容
残業時間が月60時間を越えた場合、超えた時間の労働に対しては、5割以上の割増賃金を支払う必要があります。

②施行日
平成35年4月1日
※大企業には既に適用されています。
③罰則
 6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金

④企業側の対応
 現在の割増賃金率が法律に抵触している場合には、施行前に就業規則を変更する必要があります。

年次有給休暇(以下、「年休」といいます。)の付与の義務化

①内容
 年休日数が10日以上ある労働者に対して、毎年,時期を指定して5日の年休を与えなければな りません。
 ただし、労働者自ら年休を取得した場合や、計画的付与(労使間の協定により、時期を決めて年 休の取得日を割り振ること)により年休を取得した場合には,その日数分は付与する義務はあり ません。
②施行日
 平成31年4月1日

③罰則
 30万円以下の罰金

④企業側の対応
 時期による業務量等を踏まえて,計画的な年休時期を検討する必要があります。

同一労働同一賃金

①内容
パート社員、契約社員、派遣社員等の非正規雇用者について、正社員(正規雇用者)と比較して、不合理な差を設けることを禁じるものです。
例えば,労働者の業績・成果に応じて基本給を支給する場合には,同一の業績・成果を出している労働者に対しては、正規非正規を問わず,同一の支給をしなければなりません。

 基本給だけではなく、賞与や各種手当(役職手当、皆勤手当、通勤手当、地域手当、時間外労働手当(割増率)等)等の賃金に関するものの他、慶弔休暇、病気休職の付与等も対象となります。

不合理な差を設けることは禁止されますが、労働者の業種、勤務体系、役職,責任の範囲・程度等の違いによる、合理的な差を設けることは禁止されていません。

例えば,生産効率や品質の目標値に対する責任を負っており、目標を達せられない場合にペナルティを課せられる正社員のみ賞与を支給し、それらの責任を負っていないパート労働者に対して賞与を支給しないことは許されます。

②施行日 
(大企業)平成32年4月1日
(中小企業)平成33年4月1日

③罰則
なし。ただし、非正規雇用者と正社員との間に不合理な差を設けていた場合には、損害賠償請求をされるおそれあり。

④企業側の対応
正社員以外の従業員(パート社員、契約社員等)がいる場合、正社員と正社員以外の従業員との間に賃金等の項目に関する待遇差がないかどうかを確認します。仮に待遇差がある場合には、その待遇差が合理的な理由に基づくものかどうか検討します。合理的な理由がない場合には、就業規則、賃金規定を見直すことが必要となります。

編集後記

今回は「働き方関連法」のポイントを説明しましたが、本ニュースレターで説明したのは、同法により改正される内容の一部だけです。その他の改正点としては、国会でも議論になった「高度プロフェッショナル制度」や「勤務間インタバール制度」等があります。

年休の付与の義務化など、一部の改正内容については、来年の4月より施行されることとなるため,企業においては早急に対応を検討する必要があります。

現在の就業規則や賃金規定を確認し、法律に抵触する部分があれば、見直しを行いましょう。(弁護士 江畑博之)