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Vol.19 勾留延長?準抗告?保釈って?

2019年2月発行

  • 勾留延長?準抗告?保釈って?
  • 民法(相続法)改正

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弁護士法人美咲では、法務・税務関連のニュースや弊事務所の近況などを、ニュースレターとして不定期にお送りさせていただいております。

さて、19回目の今回は、カルロス・ゴーン氏のニュースで耳にする勾留延長・準抗告・保釈についてと相続法の改正について解説させていただきます。

勾留延長?準抗告?保釈って?

最近日産のカルロス・ゴーン(元)会長のニュースに関して、勾留延長、準抗告、保釈というワードが出て来ていました。
このあたりを知っておくと、刑事事件のニュースをより深く理解できると思いますので、ご説明しようと思います。

勾留とは、逮捕に引き続く身柄拘束を言います。

逮捕されると、最大72時間身柄拘束が続きます。

ここで身柄拘束の必要がないと言うことであれば釈放されますが、身柄拘束を継続する必要がある場合には、勾留がされます。

勾留の期間は10日間です。

ここで、どういう場合に身柄拘束を継続する必要があるということになるのか、つまり勾留されることになるのかについては、基本的には、逃亡の恐れと、証拠隠滅の恐れがある場合です。

この逃亡の恐れと証拠隠滅の恐れの有無は、裁判所が判断しますが、弁護士の立場から見れば、抽象的な恐れをもって、その恐れがあると判断されているのが実情です。

さて、10日間の勾留が終わりました。

ここで、検察官が、被疑者の処分(起訴、不起訴等)が判断できる状態になっていればよいですが、また捜査が終わっていないこともあります(多くはそうです)。この場合になされるのが、勾留延長です。勾留延長は、最大10日間です。

先に説明しましたとおり、逃亡の恐れと証拠隠滅の恐れについては、裁判所は容易に認めてしまいます。しかし、弁護士としては、いくら何でもこの事案では逃亡の恐れ等はないだろうと思うことがあります。

こういった場合に、勾留、あるいは勾留延長に対して、上級の裁判所に不服を申し立てるのが、準抗告といいます。

私も準抗告をすることがありますが、はっきり言えばほぼ認められないと言っても過言ではありません。

準抗告も認められず、勾留延長の期間も終了を迎えます。

ここで、検察官は被疑者に対して処分を決めますが、公判請求(裁判をします、ということ)をされた場合には、裁判が終わるまで身柄拘束は継続します。

裁判が終わるまでは、簡単な事件でも2、3ヶ月、難しいものでは1年以上かかることもありますが、その間身柄拘束が継続します。そこで、この公判請求後に身柄解放を求めるのが保釈です(逮捕、勾留段階では保釈はできない、というのがポイントです)。

しかし、保釈も証拠隠滅の恐れがある場合には認められず、例えば、犯罪について争っている、認めていない場合には、証拠隠滅の恐れがあるとして、保釈も認められないことが多いです。

民法(相続法)改正

相続は誰にとっても発生する問題であり、どの法律よりも身近なものといえるものであるため、以前にもご紹介しておりますが、再度相続法の改正を取り上げたいと思います。

1.配偶者短期居住権の新設

これは、お亡くなりになった方(被相続人)の配偶者が、被相続人所有の不動産に住んでいた際に、遺産分割が成立した日とお亡くなりになった日から6ヶ月を経過した日のいずれか遅い日等までは、配偶者はその不動産に居住することを認めるもので、配偶者が急な退去を迫られることのないようにするものです。

2.配偶者居住権の新設

今までは、例えば被相続人の方が、配偶者が自宅に住み続けられるようにしたいと思った場合には、遺言で配偶者に自宅を相続させると記載するのが一般的でした。

また、遺言がなく、相続人間で遺産分割協議をするような場合に、配偶者が自宅に住み続けたいと思った場合には、配偶者が自宅の所有権を取得するというのも一般的でした。

この場合には、配偶者は自宅の所有権を取得することになりますが、自宅は財産的価値が高く、それを取得することによって、他の預貯金等を相続できないということがありました。

しかし、配偶者が真に必要としているのは、居住する権利であり、自宅の経済的価値については必要ではない(居住できればよく、所有権までは必要ない)ということもあり得ます。

そこで、遺言や遺産分割において、配偶者居住権という権利を設定し、配偶者には居住権を、所有権は子どもにという与えるということを可能にすることによって、より柔軟な遺言の作成、遺産分割ができるようになりました。

3.遺産分割前の預貯金の払戻し制度の新設

被相続人がお亡くなりになると、預貯金口座は凍結され、払い戻しをすることはできなくなります。

その結果、葬儀費用の支払いが困難になったり、また被相続人の口座にある預貯金で生活していた配偶者などは、当面の生活費に窮してしまいます。

そこで、相続開始時の預貯金債権額の3分の1に権利行使社の法定相続分を乗じた額(ただし、金融機関毎に法務省令で上限が定められます)については、遺産分割の成立を要件とせずに、単独で払い戻しが可能になります

4.自筆証書遺言の方式緩和、遺言の保管制度

以前のニュースレターでもご紹介しましたが、遺言の方式は大きく分けて、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。

自筆証書遺言は、遺言を自署にて作成するもので、手軽に作成できることがメリットでした。しかし、不動産が多数に及ぶ場合などに、不動産の所在、地番、地目、地積などを全て自筆で書くというのは、手間がかかります(特にご高齢の方ですと、記載が不可能ということもあり得ます)。

そこで、改正により、財産目録に関しては、各頁に署名押印することを条件として、自署によらなくてよい(パソコンでの作成や写しの添付等)こととなりました。

ここで、重要なのは財産目録に関してのみ自筆によらないことが認められていることであり、遺言書本文については、あくまでも自署が必要です。

また、自筆証書遺言については、そのデメリットとして、相続人による隠匿や、紛失が上げられていました。そこで、法務局による遺言書の保管に関する法律が制定され、遺言者の依頼により、法務局が遺言の保管を行う制度ができました。

5.まとめ

相続法の改正については、他にもいくつかの改正がありますが、身近で重要なものとして、以上の4点を上げました。

気になるところ等ございましたら、いつでも当事務所にご相談下さい。

編集後記

カルロス・ゴーン氏については、ニュースで「準抗告」というワードが取り上げられることは余りないことから、解説致しました。相続法の改正については、相続人の利便性や柔軟な解決を認めるもので、大きく相続のルール自体が変わったというものではないという印象です。また、配偶者居住権の問題など、実際に制度が開始してみないと、その利便性が分からないところもありますが、民法という基本的な法律が改正されたことから、再度今回のニュースレターでご紹介致しました。(弁護士 小林 塁)。