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Vol.20 年次有給休暇付与の義務化について

2019年4月発行

  • 年次有給休暇付与の義務化について

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弁護士法人美咲では、法務・税務関連のニュースや弊事務所の近況などを、ニュースレターとして不定期にお送りさせていただいております。

さて、20回目の今回は、平成31年4月1日から施行される「年次有給休暇の付与義務化」について少し詳しくご説明します。

年次有給休暇付与の義務化について

平成30年6月29日、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」、通称「働き方改革関連法」が成立し、それに伴って労働基準法が改正されました。
その結果、平成31年4月から、使用者は、年間10日以上の有給休暇を取得することができる従業員に対し、最低5日以上の有給休暇を実際に取得させなければならないことになりました。

年次有給休暇の制度とは?

そもそも、有給休暇とは、労働者の休暇日のうち、使用者から賃金が支払われる有給の休暇日のことをいいます。正式には「年次有給休暇」といいます。
年次有給休暇の取得は労働者の権利であり、使用者は、労働者から有給休暇の請求があった場合には、原則として拒否することができません。例外的に有給休暇取得により会社の事業の正常な運営が妨げられる場合に限り、他の時季に変更できます。

年次有給休暇取得の要件

使用者は、①入社から6か月間継続勤務している正社員(フルタイムの契約社員を含みます)や、②入社後6か月以上を経過している週30時間以上勤務のアルバイトやパート社員などの非正規労働者に対して、労働者が直近1年間の全労働日の8割以上を出勤した場合には、原則として10日の有給休暇を与えなければなりません。
また、使用者は、③週30時間未満勤務の非正規労働者であっても、全労働日の8割以上を出勤した場合には、勤続期間や週の所定労働日数によって、1日~20日の有給休暇を与えなければなりません。

年次有給休暇付与の義務化

今回の法改正により、使用者は、年間10日以上の有給休暇取得の権利がある労働者に対して、取得時季を指定して、少なくとも5日の有給休暇を取得させなければならなくなりました。

対象となる可能性があるのは、以下の従業員です。
 ①入社から6か月以上継続勤務している正社員(フルタイムの契約社員も含む)

 ②入社から6か月以上継続勤務している週30時間以上勤務の非正規社員(パート・アルバイト含む)

 ③入社から3年半以上継続勤務している週4日勤務の非正規社員(パート・アルバイト含む)

 ④入社後から5年半以上継続勤務している週3日勤務の非正規社員(パート・アルバイト含む)

なお、週2日勤務以下の非正規社員は、有給休暇の権利は最大でも年7日となるため、対象にはなりません。

上記①~④の従業員が直近1年間で出勤率が80%以上の場合には、年10日以上の有給休暇取得の権利が発生し、使用者は、その労働者に対し、有給休暇の取得時季を指定して最低5日以上の有給休暇を現実に与えなければならなくなりました。

例えば、労働者から有給休暇取得の申し出がなくとも、使用者が労働者に対し、「〇月△日に有給休暇を取得してください。」等と、最低5日間は休暇を取得させなければなりません。

有給休暇を取得させるタイミング・方法等

1 有給を取得させるタイミング

 使用者は、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に、5日間については、取得時季を指定して、有給休暇を現実に取得させなければなりません。

 例えば、平成31年4月1日に入社した正社員に対しては、10日の有給休暇が付与された平成31年(令和元年)10月1日から令和2年9月30日までの間に、5日間の有給休暇を取得させなければなりません。

2 時季指定の方法

 使用者は、時季指定にあたっては、労働者の意見を聴取しなければなりません。また、できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう、聴取した意見を尊重するように努めなければなりません。

3 時季指定を要しない場合

 既に5日以上の有給休暇を取得している労働者や、労使協定による計画年休を取得する場合には、その日数分を5日から控除する必要があります。

 つまり、使用者は、使用者による時季指定、労働者自らの請求、計画年休、のいずれかの方法で年5日以上の有給休暇を取得させればいいということになります。

4 年次有給休暇管理簿

 使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保存しなければなりません。

5 就業規則への規定

 休暇に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項であるため(労働基準法89条)、時季指定の対象となる労働者の範囲や時季指定の方法等について、就業規則に記載しなければなりません。

6 罰則

 使用者が、労働者に年5日間の有給休暇を取得させなかった場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります(労働基準法120条)。

編集後記

新年度も始まり、新元号も発表になりました。この春から、我々の生活を取り巻く環境も大きく変化していますが、その一つが「働き方改革関連法」に関する法改正です。
これまでも年次有給休暇の制度はあったものの、日本では、有給休暇の取得率が低調に推移しており、有給休暇の取得促進のために、使用者に年次有給休暇の時季指定義務が課されることになりました。
企業のコンプライアンスが特に指摘される昨今、従業員に対して適正な有給休暇を取得させるよう、早急な対応をご検討ください。また、労務に関するご相談がありましたら、当事務所に気軽にお問い合わせください。(弁護士 江幡 賢)