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Vol.8 相続の基本と相続Q&A

2017年4月発行

  • 相続の基本と相続Q&A

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弁護士法人美咲では、法務・税務関連のニュースや弊事務所の近況などを、ニュースレターとして不定期にお送りさせていただいております。

さて、8回目の今回は、当事務所が注力しております、相続問題について解説させていただきます。

相続の基本と相続のQ&A

相続が起きたらどうしたらいいか!!

ご家族(両親、配偶者、子、兄弟等)がお亡くなりになった場合、ご自身が相続人になることがあります。相続人になった場合、これからご説明するように、相続を放棄するか否かを選択し、放棄しないで相続する場合には、遺産分割協議等の一定の手続きをとる必要があります。

相続放棄って?

相続放棄は、文字どおり、相続を放棄することで、初めから相続人でなかったことになります。 相続をするということは、お亡くなりになった方(「被相続人」といいます)の財産をすべて引き継ぐということですが、ここには借金等のマイナスの財産も含まれます。
ですので、被相続人に借金等があり、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が大きいという場合には、相続放棄の手続きをとることが合理的です。
 ここで「手続き」と言いましたように、相続放棄をする場合には、家庭裁判所で手続きをする必要があります。他の相続人に迫られ、「相続を放棄します」という書面を作っただけでは不十分です。
 また、相続放棄は、3か月以内に行わなければならないことにも注意が必要です。この3か月以内に放棄をしなければ、相続を承認したものとされますので注意が必要です。

遺産分割協議

さて、相続放棄をしない場合には、他の相続人と、どのように遺産を分割するかについて協議をしなければなりません。
遺産分割の内容については、相続人同士で話し合いがつくのであれば、特に制限はありません。法定相続分どおりに分けてもよいですし、特定の人が全財産を相続するといった内容のものでも構いません。協議が整いましたら、遺産分割協議書を作成し、無事遺産分割は終わりということになります。
なお、遺産分割協議書の作成方法によって、後で紛争の種になることもありますので、不安でしたら一度弁護士にご相談されることをお勧めします。

遺産分割トラブル

このように遺産分割協議がスムーズに行けばよいですが、次のようなことから、スムーズに進まないこともあります。
例えば、共同相続人である兄は、被相続人である母が生きているとき、母から家の建築費用1000万円の贈与を受けている。これを遺産分割にあたって考慮すべきだ(特別受益の問題)。
自分は母が生きているとき、母の面倒を見ていたが、他の相続人は面倒を見ていない。それなのに法定相続分通りに遺産分割をすることには納得いかない(寄与分の問題)といったものです。
このような事情から、当事者間で遺産分割協議を行うことが困難な場合には、裁判所に遺産分割調停を申し立て、第三者の立場にある調停委員を交えて、話し合いを行うことになります。

相続Q&A

相続放棄について

Q.相続放棄をしたいと思うのですが、何か気を付けることはありますか?

A.相続放棄前に遺産を「処分」してしまうと、相続を承認したものとみなされ、放棄できなくなります(民法921条1号)。
何が「処分」に当たるかは必ずしも明確ではありませんが、ひとまず、財産的価値のあるものを、費消したり、譲渡したりする行為はこれに当たります。
典型的には預金を下ろして費消する行為が挙げられます。  

Q.被相続人の葬儀費用について、遺産から支出しました。それでも相続放棄はできますか?

A.先ほど述べたように、何が「処分」に当たるかは必ずしも明確ではありません。一見すると遺産を費消しているため、「処分」に当たるようにも思われます。
しかし、遺族として当然営まなければならない葬式費用に相続財産を支出しても「処分」にはあたらない、という裁判例がありますので、支出として相当な範囲内のものであれば、「処分」には当たらず、依然として相続放棄ができるものと考えてよいと思います。

特別受益について

Q.特別受益とは何ですか。

A.被相続人から相続人に対して遺贈された財産、及び婚姻や養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与された財産を言います。
特別受益がある場合には、遺産額を確定するにあたって特別受益額を加算します。
言葉にすると難しいですが、先に財産を受け取っている人がいる場合に、それを考慮して遺産分割を行うものです。

Q.母が亡くなりました。共同相続人である妹が、母から生活費として、月2万円程度、10年間にわたり援助を受けていたようです。これは特別受益になりますか。

A.あらゆる贈与が「生計の資本として」の贈与として特別受益とされるのではなく、相続財産の前渡しとみられるような贈与に限られます。
今回のように、少額の贈与であれば、それは相続財産の前渡しというよりも、親族間の扶養的金銭援助に過ぎないと考えられるため、特別受益に当たらないと考えられます。

Q.父が亡くなりました。父は、私を保険金受取人として、生命保険をかけていました。ですが、兄は、生命保険も遺産だから分割すべきだと言っています。どうしたらよいでしょうか?

A.判例上、特定の相続人を受取人に指定した死亡保険金にされています。
  したがって、受取人本人が取得して問題ありません。
  もっとも、この死亡保険金が特別受益となるのではないかという問題もあります。これについては、判例上、原則としては特別受益には当たらないが、諸般の事情からして、共同相続人間に、到底是認できないほどの不公平が生じる場合には、特別受益に準じて扱うとされています。

編集後記

相続に関するご相談として多いものに、今回ご説明した相続放棄、特別受益の問題があります。
相続放棄をしようとしているが、他方で被相続人の財産を整理(廃棄等)したいと考えた場合に、どこまでのことをしてよいかについては、ご自身で判断することは難しいと思います。

また、特別受益を含め、相続が一旦「争続」となってしまえば、解決は容易ではなく、弁護士による関与が適当と思われます。

相続は、誰もが抱えうる問題であるため、今回ニュースレターの題材にしました。
(弁護士 小林 塁)